自己破産しても免除されない負債
自己破産は、破産者が負っている債務の支払い義務を免責するための手続きです。
たとえば、
- サラ金や消費者金融からの借金
- カード会社でのカードローン
- 銀行からの融資や住宅ローン
- 車を買った時の自動車ローン
- 連帯保証人になった保証債務
- 親や友人から借りた借金
これらの負債は、自己破産が許可されるとすべて免責されることになります。
しかし、負債の中には、自己破産をしたとしても免れず、残ってしまうものもあります。
それが、自己破産の非免責債権(ひめんせきさいけん)というものです。
非免責債権とは
自己破産をしても免責されない債権は、以下の通りです。
- 租税等
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償
- 故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償
- 夫婦間の協力・扶助の義務、婚姻から生ずる費用の分担の義務、子の監護に関する義務、親族間の扶養の義務、および以上の義務に類する契約に基づく義務に係る請求権
- 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権および使用人の預かり金返還請求権
- 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(ただし破産手続開始決定があったことを知っていた債権者の請求権は除く)
- 罰金等
非免責債権の具体例
上記の免除されないものの具体的な内容は、以下のようなものになります。
①租税等
自己破産をしても税金(様々なものがありますが、住民税や自動車税等)や社会保険料(国民健康保険、国民年金)については免除されませんので、免責が確定した後も支払う義務があります。
*なお、支払いが厳しい場合は、役所の窓口で相談することで、分割での支払いに対応してもらえる場合もあります。
②悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償
悪意による不法行為の損賠とは、例えば、故意に他人をだましてお金を詐取したことに対する損害賠償などについては、免責が確定した後も支払いを続けていかなければなりません。
③故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償
故意や重過失による不法行為の損害賠償とは、例えば、故意に他人を殴りけがを負わせたことに対する損害賠償や、著しい不注意が原因で交通事故を起こしたことにより、他人にけがを負わせたことに対する損害賠償などは、免責が確定した後も支払いを続けていかなければなりません。
④扶助・監護・扶養等の義務にかかる請求権
これは、夫婦間の協力・扶助の義務、婚姻から生ずる費用の分担の義務、子の監護に関する義務、親族間の扶養の義務、および以上の義務に類する契約に基づく義務に係る請求権のことをいいます。
扶助・扶養・監護義務による請求権とは、例えば、離婚した子どもに対する養育費や、日常の生活費などについては免責が確定した後も支払いを続けていかなければなりません。
⑤雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権および使用人の預かり金返還請求権
雇用関係にかかる請求権とは、従業員の方に未払いの給料がある場合や、預かり金がある場合、自己破産をしても免除されませんので、給料の支払い、預かり金の返還をする必要があります。
⑥破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
破産者が知っているにもかかわらず、債権者名簿に載せられなかった破産債権者は、免責に対する意見を申述する機会を与えられず、免責に対する防御の機会が完全に奪われてしまうため、知っていて申告しなかった債権者に関しては免除されません。
なお、破産者が知っていて債権者名簿に記載しなかった請求権であっても、破産手続き開始決定があったことを知っていた債権者の請求権は、非免責債権とはなりません(その債権者が知っているのであれば、保護する必要がないため)。
⑦罰金等
罰金等は、自己破産の免責が確定した後も、支払いを続けていかなければなりません。
なお、非免責債権の前段階の話として、そもそも自己破産の許可がおりるかどうかという免責不許可事由という基準もあります。